絶望の作り方

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 叫ぶのかと思ったが、人は想像しなかった出来事に出会うと、何も反応が出来なくなるらしい。  でももういい。満足した。  絶望した母親に近づくと、決して外さない距離から発砲した。  子どもの血、母親の血が混じり合い、一つの大きな流れとなって広がっていく。  男の叫び声が響き渡った気がした。  とある大通りで行われた、無差別殺人。  その犯人として俺は捕まり、裁判にかけられたのち、死刑判決を受けた。  ◇◆◇  この国の司法は、犯罪者に寛大だ。    安楽死が法的に認められ、それを専門とする病院が山のように増えた事で、数年前から死刑執行もこれらの病院に委託されることが決まった。  死刑は、安楽死。  苦しみを与えて死んで欲しいと願う遺族にとって、これ程の屈辱はないだろう。  そうして俺も死刑執行のために、安楽死専門の病院に収監された。  死刑囚である俺が、他の安楽死を望む患者と同じお客様待遇なわけがない。  部屋は相部屋。先客は、一人の少年だった。 「先生、あいつも死刑囚か?」  先生とは、この病院の医師。俺が死ぬまで、健康管理などの対応をする。
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