絶望の作り方

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 先生は死刑囚の俺を恐れもせず、少し疲れた様子の目元に皺を寄せながら、穏やかに微笑みながら答えた。 「いや、彼は一般の人だよ。難病を抱えてるんだけど、ドナーが見つからなくてね。本人の希望で安楽死させる事になってるんだよ」  病気を苦に安楽死。よくある話だと思った。  線の細い少年の姿を目に映しながら、先生は声を潜めた。 「本当は一般の人間だから、別の病棟にいるべきなんだけど……。ここだけの話、親が支払いをせずに逃げてね。死刑囚と相部屋で良ければという条件で、ここにいさせているんだ」  そんな情報、どうでもよかった。  部屋に入ると、少年は弱々しい小さな声で「リョウタです」と名乗った。俺は名乗らなかった。  リョウタは、黙って部屋の隅でずっと本を読んでいた。その本には、「中学二年生国語」と書かれている。時たま、ノートに何かを書き写し、それをずっと繰り返していた。  何が楽しいのか分からず、俺は部屋のベッドに横になった。  しばらくすると、食事が運ばれてきた。  ここは死刑囚がいる部屋。配膳係も中には入らず、部屋のドアの下にある小さなドアから、トレイに乗った食事を差し込んだ。
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