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全く、その通りだと思った。
リョウタが食事の時怯えていたのは、彼と一緒になった死刑囚が皆、こいつの食事を奪ったからだという。
確かにあの量で、腹が一杯になるわけがない。奪う囚人たちの気持ちが、良く分かった。
その中で、奪う事なく逆に与えた俺に、リョウタは妙に懐いた。
「俺、病気で学校になんていけなかったからさ……。先生にお願いして、こうして勉強させて貰ってるんだ」
リョウタは尋ねてもいないのに、自分が何をしているのかを俺によく話した。
今、読んでいる本の事。
新しく知った知識。
大きくなったら、自分のような病気の子どもを助ける医者になりたかった事。
でも最後は決まってこう言った。
「ドナーさえ見つかれば、手術も出来るんだけどな。でも病気でずっと苦しむよりも、安楽死させて貰える俺はまだ幸せなのかも」
手に届く事のない未来を夢見て、最後は諦めたように自身の現実との乖離を思い、弱々しく笑う。
(医者になりたい……か)
初めて聞いた時は何も感じなかったが、こうして毎日顔を合わせ会話をしていると、段々その言葉に特別な意味と感情を抱くようになっていた。
こんな事は初めてだった。
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