絶望の作り方

8/14
前へ
/15ページ
次へ
 そう言って先生は俺の腕から血をいくらか抜くと、部屋を出て行こうとした。しかし、俺の声が先生の足を止めた。 「先生。俺、今まで自分の人生に意味などないと思っていた。でも、リョウタのドナーになれたら……、こんな俺の人生にも意味が出てくるかもしれない。だから……、頼んだ」  先生は振り返らなかったが、右手を振って俺の言葉に答えてくれた。  心が動いた気がした。  ◇◆◇  リョウタと俺の血が一致した。  俺は、リョウタのドナーになる事を決めた。  その話をリョウタにすると、始めは恐縮していた少年だったが、嬉しさは隠せなかった。  何度もお礼を言われた。  何度も手を握られた。  ありがとう。  ありがとうございます。  今まで生きてきて、これだけ感謝の言葉を浴びせられたのは初めてだと思う。  それだけで、ドナーになる事を選んで良かったと思った。  無意味だと思っていた俺の人生に、ようやく意味を見いだせた気がした。  俺の人生は、リョウタを生かすためにあったのだ。  リョウタと俺は、これから先、何をしたいのかを長い時間話し合った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加