1話 ダークサイドの少年

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 時は〝今〟に戻る。  久しぶりに遊ぶ約束をした僕たちは放課後三人で電車に乗り、僕の家に行った。  みんなで遊ぶ時は大体僕の家で遊ぶことが多く、家でゲームしたり『ネットフリーダム』でお薦めのアニメを視ることが多い。『樹海城』は元々砂乃くんからお薦めされたアニメで、原作はゲームだ。主人公はレイ・トワイライトという少年で、ルシア女王とは幼馴染で同じ軍学校出身。しかし国が王政派と共和制派で別れ、二人が戦争で対立するという話である。  今日はみんなでポテチ(コンソメ味)を食べながら樹海城の戦争アクションゲームをプレイすることにした。  深い森の中に佇む古城の中で、ルシア女王は攻めてくる敵軍の様子を切なげな顔で窓から眺めている。敵軍の中にいる親友の少年レイを想いながら「さあ、わたくしを殺しに来なさい。……わたくしのことを恨みなさい。わたくしの……親愛なる君」と呟いた。  僕がコントローラーを握り、みんなでゲームのムービー映像を視聴していると、砂乃くんは感嘆のため息を漏らす。 「……はぁ。やっぱりルシアっていいよなぁ。悪役だけど憎めない、悲劇のダークヒロイン」 「そうだねぇ、私も好きだな彼女のこと。親友だった二人が戦争によって引き裂かれ、敵となった今もレイを想っているとか、泣けてくるよ」  洛奈もゲームの内容に夢中のようだ。 「私の小説の参考にしたいくらい」 「え、倉本さん小説書いてるの? 読ませて読ませて!」  砂乃くんは狼みたいな吊り目を輝かせ、笑っている。 「えー、恥ずかしいよぅ」 「倉本さんの小説とかすげー気になる。ぜひお願いっ」 「だから無理だってばー」  洛奈は迷惑そうだが、砂乃くんの頬は微かに紅潮している。興奮しているせいもあるだろうけど、僕はなんとなく彼の彼女に対する気持ちを知っている。  今も砂乃くんは……洛奈のことが好きだ。  彼が以前僕の家に遊びに来た時、嬉しそうに赤面しながら女性ものの髪留めを検索していたから、てっきり彼女でもできたのかと思っていたのだが。  こうして二人の様子を見ていると、今も砂乃くんは洛奈一筋っぽい。
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