1話 ダークサイドの少年

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『続きからはじめますか?』と聞かれたら、僕なら間違いなく『NO』を選択するんだけど、僕は神様じゃないからストーリーを選択する権限はない。  だから、どんな結果であろうと僕のバッドエンドまっしぐらなストーリーは続いてしまうんだ。僕はただ祈るしかない。ここは『ダークサイド』だけど、きっといつか、ハッピーエンドになるフラグを掴めることを。  例の事件の後、僕は警察から取り調べを受けた。僕は第一発見者ということにし、バイク事故までのことを嘘を交えながら話した。ちなみに、犯人の男はまだ生きていたらしい。そんな気もしていたが、さすがに僕自身の手で人間にとどめを刺す気にはなれなかった。  ハンバーグにして食う、なんてのは嘘だ。人間なんて食べたくないし、積極的に人殺しがしたいわけじゃない。人の死は重い。  犯人の意識は回復したみたいだが、事件のことは黙秘を貫いているようだ。  僕は、バイク事故の犯行がばれるかなと思ってちょっと焦ったけど、まあ心配は無用だろう。殺人犯が「走っているバイクを高校生が掴んで横転させた」と話したところで誰も信じないだろうから。  僕による死刑執行を免れただけでも、犯人は幸せだろう。せいぜい刑務所で、人の名前を捨ててつまらない番号で呼ばれながら奴隷のように暮らせばいい。  だけど、僕はふと思う。あの男は確かに母さんを殺したけど、実際は真犯人だと言えるんだろうか。男を擁護するつもりは一ミリもないし、むしろ憎しみしかないけれど、母さんは死ぬことが決まっていたのでは?  僕の脳裏にあの男の瞳の色が浮かぶ。血に染まったような不気味な赤。  ドッペルゲンガーの僕は知っていた。あれは――『呪いの色』だ。  母さんは呪われていた。多分……ドッペルゲンガーに。  ただ犯人の供述も奇妙だった。母さんを殺害したのは明白なのに、証拠だって完璧に残っているのに、一切その記憶がないというのだ。精神疾患を装い罪を軽くつもりなのかとも思ったが、それならもっと別の言い方があるはずだ。 もしかすると母さんの死因に、たまたまその男が選ばれてしまったのではないだろうか。だとすれば、呪いは人の行動までも操ってしまうのか。ならば母さんを刺した男も呪いの被害者ということになってしまう。  そうなると悪いのは誰? やはり呪いの元凶であるドッペルゲンガーだろうか。  でも、なんで母さんまでドッペルゲンガーに呪われて死ななきゃいけないんだ。  僕の大切な母さんが……。  ――もしかして、僕のせいなのか?
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