サイダーと恋模様

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 登校中の時間や、部屋にいるとき、本当にしょっちゅう私は彼の好きな歌手の曲を聴いていた。  夢が叶うなら、いつか先生と話してみたい。 『私もミスチル好きなんです、先生はどの曲が一番好きですか?』 『どの曲も好きだけど、そうだな……やっぱり、himawariかな』 『私もあの曲が一番好きです、映画も良かったですよね』 『あの映画は泣けたよな、俺たち気が合いそうだ』  よかったら一緒に観ませんか、なんて。 「うわあああああっ」  玉ねぎをまな板の上で切っている途中に、急にその場でかがみ込んでうめき始めた私を見て、リビングで新聞を読んでいた父が驚きながら言う。 「なんだ、どうした」  好きとかそういうんじゃないと心に言い聞かせていたのに、最近はもう気持ちが抑えきれなくなっているのを自分でも自覚していた。  玉ねぎ切ってるときに、なぜか急に気持ちが溢れて彼のことが好きと自覚するなんて。 「何でもない」 「いや、お前……何でもないって様子じゃなかったぞ」 「玉ねぎが、すごい目に染みたの。ただ、それだけ」  尚も怪しむような目つきをする父に背を向け、私はさくさくと小気味良い音を立てながら玉ねぎの残りを細かく刻んだ。
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