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「あおー!飲み会なんて、嘘つくなよ。楽しくもない会に出るほど暇じゃないだろ。オレ、仕事急に休みになったから。迎えに来た」
耳に突如入ってきた優しげな声色。
次いで、右手首を優しく引かれた。
その強さはまるで、綿あめにでも触れるみたいな、優しい強さ。
手首を引かれながら見上げれば、深く被った帽子と、長めの前髪の間から、優しい柔和な目尻が私を見つめていた。
「…あ、えっ…と、」
しーっ。
言いかけた私を、くちびるに人差し指を当てて遮った、優しい瞳の色にフリーズする。
「蒼がいつもお世話になっています。あんまり苛めないでくださいね?オレ、自分の大事なひとが傷つけられたら、なに仕出かすかわからないんで?」
言いながら、一瞬ひどく鋭くなった目つきを彼女たちに向けた、彼。
そんな見知らぬ彼を、ただただ見つめた。
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