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……と、言われたのはいいものの。
俺は結局、ただでもらったスマホを捨てきれずに家に持ち帰っていた。
普通のスマホじゃないという点が気になるが、永久無料で使えるスマホというのは持っていて損じゃない。
いくらなんでも、映画のようなスマホに爆弾が仕掛けられている、なんてことはないだろう。たぶん。
「さて。一体どんなすごいスマホなんだ?」
俺は早速、大仰な箱を開けて中身を見る。
「んー、別に普通だな」
普通じゃない、というからには、今の最新型スマホとか、高級なものを期待していたのだが、ぱっと見た感じもだし、操作した感じもどこにでもありそうなスマホだ。ただ、気になって機種を調べたのだが、なぜかどこにもヒットしなかった。
「そもそもlove777なんて機種、聞いたことないしな」
調べるのを諦め、操作するのも飽きてベッドの上に放り投げる。
「まあ、ただで手に入ったんだし、2台あると便利だしな。それだけでも」
と。あのスマホから背を向けて、もともと使っているスマホを操作し始めた、その時だった。
「京也」
誰かに呼ばれた気がして振り向けば、何やらスマホが発光し出して目の前が眩しくなり、俺は咄嗟に目を覆う。
「な、何だ!?」
まともに目を開けていられずに数秒間覆っていたが、徐々に光が落ち着いてきて、やがて元の明るさに戻った。
「何だ?今の」
UFOでも来たような光にわくわくしたが、目を開ければ元の部屋があるだけだった。
「ん?まあいっか」
気のせいだったということにして、またスマホを操作し始めたのだったが、また響いた声に呼びかけられた。
「京也。俺だ、俺。触れよ」
「え?さわ……?」
何とも卑猥な単語だと一人で勝手に赤面するが、無論そこには誰もいない。
「え?幽霊?こわっ」
俺は次第に気味悪さを覚え始めたが、ふとベッドの上の例のスマホを見れば、何やらちかちかと光を放ちながら画面に何かを映している。
「ん?」
気になって手に取れば、画面にはこうあった。
「俺の外見の画像を見せろ?」
読み上げれば、スマホからふふん、という得意げな笑い声が聞こえた。
「ひっ」
驚いて放り投げようとしたが、見えない手で抑え込まれているように離すことはできなかった。
「何だよこれ。離れ……」
「残念だったな。俺を掴んでいる間は落下防止のために離れないようになっている。最初投げた時はベッドの上だったから許可した」
「え、マジで」
試しに思い切り振ってみるが、全然駄目だった。どういう仕組みかはまるで分からないが、こういうのは普通のスマホにも欲しい機能だな、と呑気に考えかけて。
「いや、それより。お前はこのスマホの声か?」
「そうだ」
「録音されてる声とか?それともAI?」
俺は気になって少し操作しようとするが、さっき見た時も最低限のアプリしか入ってないようだったし、そもそもこの「俺の外見の画像を見せろ」というのがスタートアップ画面のようなものらしく、どうやっても画面を変えられなかった。
「録音かどうかは後で確かめな」
何やら自信満々な口調に腹立たしさを覚えたが、機械に怒ったところで仕方ない。俺はとりあえずこのスマホの好きなようにさせることにした。
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