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「僕が今から相談すること、絶対に秘密だよ」  伊吹(いぶき)は少し顔を赤らめ、上目遣いで私を見てくる。 「なになに、秘密って」    私には、小学一年生の弟がいる。「女の子には優しくしなさい」と言われて育った弟は、確かに女の子には優しい子に育った、と思う。  姉である私も「女の子」扱いだ。 「紗希(さき)」 「……伊吹、お姉ちゃんと呼べ」  姉の私を呼び捨てにするんじゃねぇ! 「だって、女の子は名前を呼び捨てにしてあげたら、喜ぶでしょ?」  めっちゃドヤ顔の伊吹が、前髪をかきあげる。  ――どこで覚えたんだ、そんなこと……。 「まぁ、こっち座りなよ」  ダイニングのイスを引いて、私に座るよう促す伊吹は本当に小一なのか、と恐怖さえ覚える。こいつ、このまま大きくなったらどうしよう。将来の夢がホストとか言い出しそうで、怖くて聞く気にもなれない。 「オレさ、好きな子がいるんだよね、たくさん」  はい? 今なんて? 「だから、好きな子がいるの」 「いや、聞き返したいのはそこじゃなくて『たくさん』の方ね」 「女の子はみんなかわいいから好きなんだよね」  はぁ、そうですか。 「その中でも迷ってるのが、はなと、そらと、マツコ」
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