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「え……犬?」
はなちゃんは私を見て「ワン!」と吠えた。
「かわいいだろ、雑種だけどね」
真っ白なしっぽをバサバサと振って、長い舌を出して、ハッハッと短い息を吐く。
白い犬は「尾も白い」ってか⁉︎
いや、そんなことはどうだっていいんだ。ちょっと待て、一旦整理しよう。
「そらちゃんやマツコさんもワンコなの?」
「ちょっと! ワンコじゃなくて女の子だからね!」
聞いてるのはそこじゃねえんだわ、伊吹よ。
「そらはチワワで、マツコは……あ! マツコ!」
かけ出した伊吹を目線で追う。門扉の向こうで、伊吹はマツコにハグをした。
「おやおや、はなちゃんちに遊びにきてたのかい」
伊吹が顔を上げると、マツコさんは愛おしそうに伊吹の頭をなでる。
まさかのマツコさんはワンコではなく、おばあちゃん⁉︎
マツコさんは今から買い物に行くんだよと手を振ってくれた。
「マツコはね、九十歳のおばあちゃんなんだけどね、オレのこと『かわいいねぇ』って言うから、『男の子にはかっこいいねって言うんだよ』って、教えてあげたんだ!」
今日三回目の伊吹のドヤ顔! もうごちそうさまです!
はなちゃんが別れ間際に泣くのは……もしや「泣く」じゃなくて「鳴く」か⁉︎
いろんな不可解な事柄が、パズルが合わさっていくように、謎が解けていく。解けていくと同時に、私が抱いていた疑惑も溶けていく。
「あはは、なんだ……」
「ん? どうしたの?」
すっかり気が抜けてしまった。安心しきった私は、気持ちも顔も緩んでしまった。全く、私の心配していた時間を返せ! あ〜、なんか騙された気分だ!
「あ、はなのお兄ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
伊吹がはなちゃんの顔の周りをわしゃわしゃしながら麻生くんに問いかけた。
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