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ウィーン
「ここはっ――」
到着した場所は、かつて私が気に入っていた五重奏城だった。
「君への贈り物だ」
「殿下っ……」
「うわあ、凄い!! こんなに自然いっぱいな場所なんて、初めて来たよ!!」
喜んで飛び跳ねる息子は、満面の笑みで私達を見た。
「ねえ、父様、母様!! 早く、中へ入ろうよ!! ほら、乳母も」
「ほらっ、父様と一緒に行こうか。中にはヴェリが会いたがってた方がいらしてるよ」
息子を抱き上げて、2人は大広間へ向かって行った。
「奥様、まさかこんなことがあるなんて――」
乳母が涙を浮かべながら、私に語る。
「ええ、憶えてくださったこの場所のことを」
「今宵は晩餐会を開くそうで、それは賑やかになると」
「楽しみだこと」
2人の後を追うように、私達も歩き出した。
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