狂愛《愁弥side》

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行為が終わると、ルイは俺を縛っていたネクタイをほどいた。 ルイの目が見れない。 無言のまま、風呂へ向かった。 シャワーを浴びながら考えた。 今後のことを。 綾とは終わりにしよう。 ただの幼なじみに戻ろう。 そう割り切れば辛くない。 10分ぐらいして、風呂から上がった俺はベッドの上に倒れた。 天井を見上げ、深呼吸してからルイを見た。 「すみません…本当に」 後悔している顔だ。 そもそも俺がこんな状態だから、ルイは気を使ってくれたんだ。 少しやりすぎだとは思うけれど。 原因は俺だ。 俺は目をそらして天井を見つめながら言った。 「謝るなルイ。魔がさしただけだろう?今日あったことは忘れる。お前も俺を抱いたことは忘れろ」 忘れよう。 綾との思い出も全て。 そうすれば楽になれるんだから。 だからもう、綾とは終わりにするんだ。 ルイの家を昼間に出て、自宅へ戻った。 部屋に行き、自分のベッドに倒れ込んだ。 昨日は色々ありすぎた。 少し眠ろう。 そう思って目を瞑った瞬間、俺の部屋のドアが開いた。 「よぉ愁弥。早い帰りだな」 「綾…」 綾が部屋に入ってきた。 今はどんな顔をして綾を見ればいいか分からない。 「昨日お前どこにいた?何で連絡返してこねぇんだよ」 綾は穏やかとは言えない口振りだった。 確かに何度も綾からの着信が残っていた。 無視をしたのは事実。 「どこにいたって関係ないだろう」 「映画を忘れてたことなら謝る。けどな、聞いて欲しいことがあるんだ」 聞きたくない。 何も聞きたくない。 言い訳か? それとも山田を好きだと言うのか? それなら―… 「話は俺が先だ」 俺が好きなお前の口からそんな言葉聞きたくない。 最近相手にされてない。 俺との約束よりも山田を選んだ。 ルイに抱かれてしまった。 だからもう、俺はお前の「特別』ではいられない。 綾の口から山田が好きだと言われるくらいなら、 せめて俺が―… 「この関係を終わりにしよう」 せめて俺から離れさせて。 もうこれ以上、傷つきたくないんだ。 この関係が終われば割り切れる。 綾は俺のものじゃない。 誰を好きになろうと自由。 「なんだよ…急に…。どうしてだよ?愁弥!」 突然の俺の発言に綾は驚いたようだ。 俺の肩を掴んで問いかける。 ルイに抱かれて汚れた俺を受け入れてくれるはずがない。 嫌われたくない。 だから戻ろう。 ただの幼なじみに。 俺はひとつ嘘をついた。 「好きな人が出来たんだ」 「え?」 綾が俺の肩を掴んでいた手を放した。 この関係を辞めるには、その嘘を使うしかなかった。 「好きな人が出来たらこの関係を辞めるのがルールだろう」 お前が俺から離れるくらいなら、 俺から離れるよ。 もう失うものは何もない。 「…分かったよ」 綾はそう言って俺の部屋から出ていった。 静まり返った部屋にただひとり。 もう終わったんだ、俺たちは。 綾の残像を見ながら、今更ながら涙が零れた。 「綾…」 今でもお前が好きだよ。 好きすぎて、 辛いから、 もう、傍にはいられない。
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