正直の異世界転生

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正直の異世界転生

前略、ばあちゃん。 目が覚めたら、なぜか知らない街にいたんだけど、一体ここはどこだろう? おまけに俺は村人Aみたいな服着てるし。 今さっきまで、就職活動の時から使い続けてる安物のスーツ着てたはずなのに。 背後には「FOODS」って書かれた看板つきの店。 ……ん?“宇三”なんたらって頭についてるっぽいけど、文字がかすれてて読めない。 なぜか見覚えあるような気がするのが、なーんか気持ち悪いんだよな。 さっぱり訳がわからないから、俺は隣の食料品店の人に聞いてみることにした。 「ごめんください」 「いらっしゃいませ!」 「あの、俺、隣の店の者なんですが」 温厚そうなおじさんは、怪訝な表情で首をかしげる。 「あれ?二代目さんかい?」 「あ……ええと、広瀬正直(ひろせまさなお)といいます」 しまった。 聞かれてもいないのに、思わず自己紹介してしまった。 「この街に来て間もないんですが」 嘘ではないよな。うん。 「この街の名前ってなんでしたっけ」 「ああ、ペリナーラだよ」 ペリナーラ、ペリナーラ……ペリ……ナーラ……? 思い出した! 「ありがとうございました!失礼します!」 おじさんに頭を下げて、俺は店を飛び出す。 昔よく遊んだロールプレイングゲームの舞台のひとつに、ペリナーラって街があって、旅人が立ち寄る人気食料品店の隣に、「宇三草井(うさんくさい)FOODS」って建ってたよな、たしか。 しかも、うっかり食べ物買って食うと、腹壊してライフ削られる店だった。 ばあちゃん。 俺、ゲームの世界に転生しちゃったみたいだよ。 しかも、インチキ食料品店の人になるだなんて、冗談じゃない!!
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