正直の就職

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正直の就職

小さい頃、両親が共働きだった俺は、しょっちゅう近所に住んでたばあちゃんちで面倒を見てもらってた。 「(まさ)くん、いらっしゃい」 ちょっと古くさい団地の、だいぶ使い込んだ和室の畳の匂いと、優しいばあちゃんの笑顔が、俺は大好きだった。 おかげで、ふかし芋とかせんべいとか羊羮とか、小学生にしちゃおやつの趣味が渋くなったけど。 そのうちドクダミ茶とか黒豆茶とか、ばあちゃんと一緒に飲みだした俺は、当たり前の流れで、健康にいい自然食品に興味を持つようになっていた。 やがて21才になった俺は、食品業界を志望して就職活動を始めた。 だけど全然内定もらえなくて、俺には社会人になるだけの価値なんてないんだって、日に日にメンタル削られてた時、自然食品販売店を運営してる会社から内定をもらえた。 内定もらった瞬間は嬉しくて嬉しくて。 もうばあちゃんは亡くなっていたけど、きっと俺のこと見守ってくれていて、俺を天職に導いてくれたんだって、だから仕事頑張ろうって、本気で思ってた。
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