10人が本棚に入れています
本棚に追加
正直の再出発
翌日、俺は店の扉に、「臨時休業」と書いた紙を貼りだした。
幸い、この店にいるのは俺ひとり。
食べ物買って食うと、腹壊してライフ削られるってわかってて、このまま開けてなんかいられるか!
商品棚に並んでるものを全部焼却処分して、俺は販売する商品を自分で開発すると決めた。
ここは、昔遊んだロールプレイングゲームの世界。
たしかこの街の郊外に、薬草を育ててる畑があったはず。
一生懸命記憶をたどって、思いついたのは薬草茶。
前の店主が貯めてたらしき、この世界の硬貨がたくさん入った壺を屋根裏で見つけた俺は、薬草畑まで原料を買い付けに行った。
名前を聞いてもさっぱり効能がわからないから、全種類買ってきて、片っ端からお茶を試作する。
失敗、失敗、また失敗。
だけど、やけくそで全種類ブレンドしたお茶を飲んでみたら、ばあちゃんちで飲んだドクダミ茶みたいな味がした。
たしかドクダミって、匂いにクセがあるけど、煎じて飲むと解熱や解毒の効能がある生薬だったよな。
もしかしたらいける……かも知れない!
商品名を“オレの薬草茶”に決めた俺は、店を再開することにした。
残念ながら、店名はそのままだ。
商品開発に費用使いすぎて、看板新しくする余裕がなかったから……仕方ないよな、うん。
「ごめんください」
立ち寄った旅人を、爽やかな挨拶で出迎える。
「いらっしゃいませ!体にいい“オレの薬草茶”はいかがですか?」
「ほんとに効くの?」
俺はにっこり笑ってこう言った。
「まあ、騙されたと思って、飲んでみてくださいよ」
最初のコメントを投稿しよう!