正直の再出発

1/1
前へ
/5ページ
次へ

正直の再出発

翌日、俺は店の扉に、「臨時休業」と書いた紙を貼りだした。 幸い、この店にいるのは俺ひとり。 食べ物買って食うと、腹壊してライフ削られるってわかってて、このまま開けてなんかいられるか! 商品棚に並んでるものを全部焼却処分して、俺は販売する商品を自分で開発すると決めた。 ここは、昔遊んだロールプレイングゲームの世界。 たしかこの街の郊外に、薬草を育ててる畑があったはず。 一生懸命記憶をたどって、思いついたのは薬草茶。 前の店主が貯めてたらしき、この世界の硬貨がたくさん入った壺を屋根裏で見つけた俺は、薬草畑まで原料を買い付けに行った。 名前を聞いてもさっぱり効能がわからないから、全種類買ってきて、片っ端からお茶を試作する。 失敗、失敗、また失敗。 だけど、やけくそで全種類ブレンドしたお茶を飲んでみたら、ばあちゃんちで飲んだドクダミ茶みたいな味がした。 たしかドクダミって、匂いにクセがあるけど、煎じて飲むと解熱や解毒の効能がある生薬だったよな。 もしかしたらいける……かも知れない! 商品名を“オレの薬草茶”に決めた俺は、店を再開することにした。 残念ながら、店名はそのままだ。 商品開発に費用使いすぎて、看板新しくする余裕がなかったから……仕方ないよな、うん。 「ごめんください」 立ち寄った旅人を、爽やかな挨拶で出迎える。 「いらっしゃいませ!体にいい“オレの薬草茶”はいかがですか?」 「ほんとに効くの?」 俺はにっこり笑ってこう言った。 「まあ、騙されたと思って、飲んでみてくださいよ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加