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夜の闇に包まれた街路に、派手な服装を身にまとった男たちの声が響いていた。
騒音にも近いそれは、一向におさまる気配がない。周りの通行人は危機反応から、その声の主である若者達に近づこうとすらしなかった。
しかし、彼ーー稲葉潤は違った。
潤はいつものようにノイズに導かれるようにして、その集まりにゆったりとした足取りで近づいていく。
「ねぇねぇ、もしヒマだったらこれから呑みに行かない? イイ店知ってるんだよね、もちろん俺たちが全部おごるからさ」
「い、いえ……結構です。私、これから急いで帰らないといけないので……」
男たちに絡まれているのは気の弱そうな女性。
抵抗を見せるも、男たちは聞く耳を持たず、無理やり彼女を連れていこうとしている。
それを見てーー否。それより遥か前から、潤の心はどうしようもないほどの怒りに打ち震え。
「おい」
「あ? なんだお前……グボォッ!?」
顔面一発。男の顔に、潤の鋭い拳が突き刺さる。
その表現は誇張などではなく実際、男の顔には潤の拳がめり込んでいた。
「てめぇ……いきなりなにしやがんだっ!?」
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