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仲間が殴られたのを見て、他の男達が素早く潤の周りを取り囲む。
殺意のこもった表情。普通なら腰が引けるような状況だが、潤はそれを意図も介さなかった。
向けられる多数の拳。それらを俊敏な動作で避けると一発、また一発と男達に制裁を加えていく。
やがて、見える限りの相手を殴り終え、潤は深呼吸するようにして漆黒に染まる空を一瞥した。行き場を失った衝動。
それを発散できたことに、心の底から安心を感じてーー
「あぶないーー!」
その声とともに、潤は後ろを振り返る。
しかし、次に彼が感じたのは。脳を揺さぶる衝撃とーーさっき見た空と同じような、一面の真っ暗闇だった。
「……あれ」
気がつくと、潤は公園のベンチに寝かされていた。
起き上がり、ぼんやりとした頭で自分がどうしてここにいるのかを考える。
そしてすぐに、気絶していたというただ一つの答えに思い当たった。
「いってぇ……気抜いた隙を突かれたな。アイツら、次会ったらゼッテー許さねぇ」
そう毒気づくと、潤は扇風機のように首を動かして周囲を見渡す。
人気のない公園。時刻は深夜に差し掛かろうとしており、グラウンド程度の広さしかない公園には深い静寂が広がっていた。
「なんだろう。やられた時、かすかに声が聞こえたような気がするんだが……」
思い出そうとするが、記憶には未だモヤがかかっている。まだ道具で殴られていないだけ幸運だと思った。もしそうなら今頃、無事では済んでいないだろう。
潤はベンチから立ち上がると、固まった体をほぐしながら公園を出る。
その足が帰路をたどる事はなく。その足音は再び、混沌溢れる夜の街に消えていったーー。
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