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今夜の番組はあきらめるにしても、次の土曜日エライことになるな……。
このテレビは恋人の有美が誕生日プレゼントとしてボーナスをはたいて買ってくれたものなのだ。有美は今度の土曜日に部屋に来ることになっている。もらってから半年もたっていないのになくなっていたら、揉めるに決まっている。いくらサバサバ系女子の有美でも許してくれないだろう。
ヤバい! 修羅場になる……! 一体どうしたら良いんだ!? ママンに電話して相談しようか? いや、待て。三十前の男がこの程度のことでママンに電話してどうする! そうだ! 同じテレビを通販で買えばいいだけじゃないか! そうとわかれば、さっそくママンにお小遣いを振り込んでもらおう! あ! でもこの前ドーナッツを焼いてもらったばっかりだな……。
僕がスマホを手に取って迷っていたとき、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
こんな時間に誰だろう?
ディスプレイを見ると、幼馴染の茜が映っている。僕はゾッとした。茜は小学生の頃、ガキ大将的なポジションの女子で、僕は茜の『手下3』だった。以来ずっと茜はその立ち位置で僕に接して来る。茜と縁が切りたくて、本気でヨーロッパに移住しようかと悩んだ時期もあったほどだ。
「ヒロポン、開けて」
僕は言われるがまま、オートロックのドアを開けた。一度開けなかったら救急車を呼ばれたことがあった。茜には逆らえない。
茜は僕の部屋にずかずか入って来ると、ソファに腰かけてミニスカートから伸びる長い脚を組んだ。
「何の用だよ? 出張の準備で忙しいんだけど」
僕が極力迷惑そうな表情を作ると、茜はその言葉をまるで無視した返答をした。
「ヒロポンは私のことどう思ってる?」
「はあ!?」
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