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僕は思わず茜を凝視した。茜が盗んだということだろうか? でも、どうやって? 盗んだのだとしても、目の前の茜はハンドバッグ一つしか持っていない。『今ここで』返すのなんて絶対無理だ。
僕はあきれ顔で言った。
「どうかしたんじゃないの? ゆっくり睡眠を取った方がいい。もう帰ってベッドで……」
すると茜は言葉半ばの僕に無言で紙を一枚差し出す。
「何だよ、これ?」
「質札だよ。ヒロポンのテレビ、質に入れたから」
「な……! 冗談だろ! 一体どう意味だよ!?」
「そんな驚くことじゃないよ。私達のお祝い金にさせてもらっただけだから」
質札を見ると、どうやら茜の言っていることは事実らしい。僕は激怒した。
「どうやってやったか知らないけど、こんなことして許されると思ってるのか!」
すると茜はしれっとした顔で応じた。
「許すって言ってたよ」
「誰が?」
「そのテレビをヒロポンに買ってあげた有美さんが」
僕は絶句した。訳が分からなくて頭がおかしくなりそうだ。そんな僕を茜は平然とした顔で見る。
「私、有美さんと結ばれるの」
「え!? な、何を言って……!?」
「有美さん、ヒロポンにはもったいないから奪っちゃった。で、パートナーシップ制度っていう奴を使うことにした。ニュースとかで聞いたことあるでしょ? 昼間、有美さんと一緒に合鍵使ってテレビ、運び出したんだよ」
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