第十一章 彼女を愛する決意

3/5
前へ
/91ページ
次へ
「そんなことないよ、でも私は癌なんでしょ?どうせ死ぬんでしょ」 「誰がそんなこと言ったんだ」 俺は真由香の癌だという言葉に心臓が止まるような驚きを感じた。 「だって、看護師さん達が話していたもん、二十歳の患者さん、癌なんだって、最上先生も打ち手なくてインオペしたって」 「お前その患者が自分だと思ったのか」 最上はふっと笑い、呆れた表情を見せた。 「だって、他にいるの?」 「ああ、俺の医者としての人生で初めて手の施しようもない患者だった」 「私じゃない?」 「バーカ、お前はどんどん良くなるよ」 「本当?」 「当たり前だろ、俺の患者で何人も助からない患者がいたら、俺は医者を辞める」 真由香は安心したように手から力が抜けて、バランスを崩し、落ちそうになった。 「きゃっ」 最上は咄嗟に真由香の手を掴み、内側に引き寄せた。 しかし、足が外れて宙ぶらりんの体勢になった。 「助けて」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加