夏祭りの夜に

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池を見つめて僕は動かない。 水面を叩く音は次第に小さくなってゆく。 「……楓介にも僕と同じ様に大事な人が出来ればいいってずっと思ってた。そしたら……こんな風に」 壊してやろうと思ってた。 やがて静けさを取り戻した裏山は、人を阻む様に夜の呼吸を始める。 僕は今度は最後まで見ていた。 逃げ出さずに、あぶくの一つが消えるまで、見ていた。 池の中、一人の女の子の白い太ももに、すり寄る影がいる。 まるで待ちわびた恋人の帰還を喜ぶかのように、尾びれがするりと、彼女の唇を舐めた。
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