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「えー、つまらないよ。一馬がいないと。一緒に行こうよ」
「無理言うなよ。僕の身体は一つなんだから。亜希は楓介と行けばいいだろ」
不満げに頬を膨らます亜希はこちらを睨みつけて、ふて腐れた声を出す。
「最近一馬付き合い悪い。幼馴染の私達より、剣道部の仲間のが大事なんだ」
「なんでそういう話になるんだよ」
「じゃあ、どっちが大事?」
そう聞く亜希に不安そうな様子はない。僕がどちらを取るか分かりきっていて、あえてそんな事を言うのだ。
僕は英語のテキストをリュックにしまいながら、小さく嘆息した。
「それは、亜希と楓介の方が大事だけど」
楓介の名前を付けくわえた配慮に構う様子もなく、亜希は満面の笑みを浮かべた。
「なんだ。それなら決まりだね! 私、浴衣着てくる。楓介も、一馬も着て来てよ。絶対だからね!」
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