夏祭りの夜に

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亜希の言葉に僕は尋ね返す。 「周りの大人に言えばよかったかな?」 「そ、そうだよ。楓介のした事は許されない。犯罪だよ! 一馬、今からでもー……」 自分の事の様に心配して怒ってくれる優しい亜希。 その亜希を、僕の右手が池へと押し出す。 その瞬間、亜希は自分に何が起きたのか分かっていなかったと思う。 自分の手が作り出す水しぶきで、ようやく池の中へ突き落されたのだと理解したらしかった。必死にもがきながら、僕に助けを求める。 僕はその様子をただ、見つめる。 泣きそうになりながら。 「……亜希って、運動得意だけど、泳ぐのだけは、出来なかったよね」 「か、一馬っ」 「なずなは妹だったんだ」 浴衣が水を吸い、重くなる。懸命に水中でもがいても、身体は徐々に沈んでいく。 「僕らは本当にお互いの事が好きだった。子供だったけど、そんなの関係なかった」 木々に夜空は丸く切り取られて、星々が薄く散っていた。
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