夏祭りの夜に

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私準備があるから先に帰るね。そう告げて亜希は教室を出て行った。走り去る際、肩先まで伸びた髪が左右に跳ねる。 目で追う楓介はこれ以上ないくらい不機嫌な声を出した。 「なんでお前も来るんだよ」 僕は向けられる強い視線をいなして、反論する。 「行かないつもりだったよ。文句があるなら亜希に言えよ」 「仲良く剣道部のお仲間達と群れてればいいだろ」 「だからそのつもりだったって」 あからさまに眉を寄せる楓介はけれど、それ以上は何も言わなかった。 僕が行かなければ亜希は来ない。 来てもつまらなそうに自分の側で拗ねるだけなのが予想出来たからだろう。 「……亜希、髪伸びたよな」 愛おしむ様な従兄弟の呟きを、拾ったけれども僕は何も返さなかった。 鈴鳴町(すずなりちょう)の夏祭りは8月中旬に行われる。
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