夏祭りの夜に

4/22
前へ
/22ページ
次へ
水の神、産魚之女(うぶうおのめ)が祭られている産魚神社(うぶうおじんしゃ)は市民公園の敷地内にあって、少し前から公園を囲むようにして提灯と灯篭がぶら提げられているのを見かける様になった。 産魚之女とある通り魚にも縁のあるところで、神社の境内には鯉を模した石像と、楕円の池があって、そこに想い人の名前を書いた紙を浮かべ、恋の行方を占う事が出来る。 大体の紙がすっと水に溶ける一方、しばらく水に溶けずに浮いていたら成就するという言い伝えがあって、縁結びのご利益がある事でも有名で県内外から訪れる人も多い。 けれどこの祭りは完全に地元民の為の祭りだと僕は思う。 日頃の無病息災を願い、商売繁盛を祈念する会社、企業はもちろん近所の学生から高齢者までこの日を心待ちにしている。 元々、イベントの少ない田舎町だから、手軽に味わえる非日常がこの8月くらいにしかないというのが実情だ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加