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家までの道を連なって歩きながら、楓介が口を開いた。
「そういえば、亜希の奴、浴衣着てこいとか言ってなかったか」
学校でのやり取り思い出しながら僕は頷いた。
「着てくんの、お前」
そんな事を聞くあたり、楓介は着ていくか迷っているみたいだ。
考える振りをして、答える。
「着て行かない。洋服で行く」
「亜希、悲しむぞ」
「怒るの間違いだろ。楓介が来て来れば十分だよ。第一、僕浴衣なんて持ってないし」
着れば喜ぶと思うよ、亜希。付け加えると、まんざらでもなさそうに楓介は口元を緩めた。
「お前、途中で自然に消えてよ」
もう一度頷くと僕は楓介と別れた。
部屋に入ると、むっとした空気が身体を包んだ。
制服のポケットが震えて、スマホを取り出す。亜希だ。
(18時に神社の鳥居の所に集合! 遅れないでね)
僕はシャツのボタンを外しつつ、時計を見た。16時40分。返事を打つ為にスマホに手を伸ばす。
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