夏祭りの夜に

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メッセージアプリに亜希のお気に入りのスタンプが表示されている。 祭りにはTシャツにチノパンを合わせる事にして、僕はベッドで目を閉じた。 去年のバレンタインデーに亜希からチョコレートをもらった事を思い出す。 伏目がちに、顔を赤らめた亜希は確かに中学の頃からしたら大分女っぽい。 いい訳でもするかのように「沢山作って余ったの」そう言って差し出す箱を、僕は受け取るか迷った。 「楓介は?」 「え?」 「楓介にはやったの?」 亜希がぽかんと口を開ける。 それから何か言葉を飲み込むかのように笑顔を作ると、明るい声音で僕を安心させた。 「もう一馬は優しいなぁ。しょうがない。あげないつもりだったけど、あいつにも友チョコくらいくれてやるか!」 その言葉にほっとした。 僕は楓介の亜希に対する気持ちを知っている。 瞑った瞼の裏に小さな頃の楓介の目が、うつった。 今でも。 忘れる事の出来ない三日月形に細められた目。
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