夏祭りの夜に

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首を横に振って、楓介の存在を知らせると、相手は納得した様子で軽口を叩く。 「なんだ、つまんねぇな」 「ただの幼馴染だよ」 「仲がよくていいじゃん。俺もかわいい幼馴染が欲しいよ」 僕の肩を叩いて、部活の仲間は去って行く。 遠慮したのか、少し離れた場所にいた亜希が楓介を伴って近づいてきた。 「剣道部って皆仲いいよね」 「そう? 別に普通だよ」 「きっと一馬が主将だからだね」 無邪気に向けられる誉め言葉を、笑いながら受け流して、視線を上げる。 楓介が黙ってこちらを見ている。 あの目が、見ている。 「そういえば、神社の池で浮き紙をしてるんだって」 「浮き紙?」 「好きな人の名前を書いて池に浮かべるの。10秒間水に浮いていたら成就する。すぐに消えてしまったら期待薄……」 「ああ、それ」 「皆で後で行ってみようよ」 「いいけど。それをしたいって事は亜希、好きな奴いるの?」
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