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楓介の言葉に亜希は小首を傾げてみせた。
「さぁ、どうでしょう」
楓介の焦りが痛い程伝わって来る。
空腹の僕らはひとまず、割り勘でたこ焼きと焼きそばを食べる事にした。
亜希の言葉の真意が楓介は気になって仕方がないらしい。
「そんなに食べると太って好きな奴に嫌われるぞ」と揶揄い、「お前の好きな奴、同じクラスの奴だろ?」と鎌をかけ、どうにかして亜希から情報を引き出そうと必死だ。
亜希はといえば楓介の見え透いた誘導に引っかかるつもりはさらさらないらしく、サービスで作ってもらった他より大きな綿あめを満足そうに食べていた。
泣き声が聞こえたのはそんな折だった。4歳くらいの女の子が、金魚柄の浴衣姿で涙を拭っていた。保護者らしい大人がいない様子を見ると、間違いなく迷子だろう。
僕は近寄ると視線を合わせる為、膝を落とす。
女の子は不安そうな表情で、僕を見上げた。
「……お兄ちゃん」
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