第二次上田合戦

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第二次上田合戦

幸村が沼田城を去り、昌幸が従えてきた兵達の足音も無くなった頃。 城を燃やし続けていた火はようやく消し止められ、 家臣に連れられてやって来た町医者の一人が 腕を怪我したまま疼くまるイナを見つけて手当てをした。 血は多く流れていたが、幸い深い傷ではなかったため 傷跡は残るかもしれないが、いずれは腕が使えるようになるだろう、と町医者は言った。 他にも怪我をした者が大勢いたが、互いに処置をしたり助け合ってどうにか回復に向かい、 支援しにやって来た領民たちの好意によって 怪我人たちは彼らの家で暫く厄介になることとなった。 清音だけが命を落としたため、 信幸が戦に出て不在の中ではあったが イナの主導で葬儀が執り行われた。 しかし、燃えてしまった城の再建のため 家臣や女中の多くが忙しくしており 清音の葬儀に顔を出す者は多くなかった。 清音と親しくしていた侍女たちも、 初めこそショックを受けた様子だったが 日々忙しく過ごしているためか悲しむそぶりをあまり見せなかった。 清音と身体の関係を結んでいた家臣も多くいたが、 そのほとんどは日頃からの素行があまり良くなく再建にも非協力的だったため イナは彼らを迷うことなく解雇した。 城仕えという、割の良い仕事を失い 路頭に迷うこととなった彼らはイナに抗議したが、 彼らを解雇しても、清音に文句を言われることもなく 昌幸ももはや自分にとっての主君ではなくなっていたため イナの城代としての発言は効力を発揮した。 人を減らしたことで、家臣に与えていた奉公代や食糧の取り分が僅かに増えたため、 イナはそれを再建に協力してくれる領民達に分配した。 解雇した家臣は十人に満たない程度だが、 それを数十人の領民に分配すると 「こんなに頂いて良いのですか!?」 と目を丸める領民たちを見たイナは、 城仕えをする武士というものが、農民や商人達と比べていかに金をかけた暮らしをしているかを身にしみて感じた。 当然、信幸やイナもその例外ではない。 それでも、真田家として蓄えていた資産の多くを 武器の調達や兵の養成に費やしているのだから、 戦というものがいかに金がかかる、贅沢なものであるかを痛感したのだった。 城を建て直すお金が足りない。 善意で修繕の手伝いをしてくれる領民にもっと報いたい。 それでも戦のためにお金が吸い上げられていく現実に イナは眩暈がしそうになりながらも、 どうにか信幸の帰還までに、少しでも元の城に戻そうと努力をしていた。 ——同刻。 信幸は、家康から真田家の持つ城の一つを攻撃するよう命を受け、兵を従え向かっていた。
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