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ああ、彼になんと説明しよう。そもそもこういうところを見て普通に軽蔑するのではないか。というか、自分が逆の立場なら見ていないふりをしてしまうし、反応に困ってしまうだろう。そんな場面に巻き込んでしまった御堂に、申し訳なさしか感じなかった。
「怪我、してない? 苦しかったね。口のハンカチ取るから少し我慢して……、ああ、口の中にも詰められてたのか……」
御堂は三神峯の前に片膝をつくと口元で縛られていたハンカチを解き、ためらいもなく口の中に詰められていたハンカチを取り出した。
「すみませ、……っ」
だめだ、気持ち悪い。胃痛と口の中に入っていたハンカチの感覚、触られていた感覚が抜けず気を抜いたら本当に吐きそうだ。急にせり上がってくる胃液をかみ殺すように口を押さえれば、御堂が顔にかかる髪を押さえて背中を擦ってくれた。
「吐きそう? 洗面台まで行ける? 厳しかったら俺の手に吐いていいよ。大丈夫だから」
「っ、それは……っ」
人前で吐くなんて真似は絶対に避けたい。そんなところを見せてしまったら大人として何かを失うような気がする。そう思って必死に耐えようとしたが、背中を擦る御堂の手と口を覆ってくれた大きな手に、ひどく安心して力が抜けてしまった。
「うっ……」
「ん、吐きそうかな。大丈夫大丈夫。誰も来ないから安心して」
「っ……げほっ、ぐ、う……」
「よしよし、苦しいな」
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