告げるだけなら罪にはならない

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「ねえ、篤人くん。あたしがあなたに告白した日、覚えてる?あの日は10年に1度の寒波が来てたよね。ほんと寒かったなぁ……。私は緊張で、篤人くんは寒さで震えてたよね。」 「あたし、あの時はいい返事もらえなかったけど、聞いて貰えただけで嬉しかったんだ。もちろん悲しいよ?あの後たくさん泣いたし。でも、最後まで笑ってお話できた。偉いでしょ。」 「篤人くんは、その時彼女がいるんだって教えてくれたよね。それじゃあ、仕方ないよね。それに、むしろそのことをきちんと教えてくれるなんて誠実だなって思った。もっと好きになるところだったよ。」 「篤人くんの彼女さんはとっても可愛いよね。ミルクティー色のボブがよく似合ってる。いつも淡水パールのピアスをつけて、おめかしさんだよね。あ、最近はピンクゴールドのハートのピアスだよね。篤人くんがあげたのかな?」 「週に2回、パーソナルジムにも通ってるみたい。やっぱりスタイル良いもんね。努力家さんなんだ。篤人くんに見合う人はそれくらいしなきゃいけないよね。」 「あー、そういえば彼女さんには歳の近いお兄さんがいるみたいだね。この前、駅前のバーでみたの。家族揃っておしゃれなのね。羨ましいなぁ。」 「そうそう。お兄さんと言えば、近所のスーパーで2人が買い物しているところも見たの。合い挽き肉を買っていたから、ハンバーグかしら?なんて。家庭的よね。きっと篤人くんに食べさせてあげるために練習してるのね、素敵。」 「あ、この前友達と映画を見に行ったの!そしたら、お兄さんと彼女さんが居て!話題の恋愛映画のチケットを買ってたの。どこまでもかわいらしく乙女なのね。」 「え、なーに?もういいって?篤人くんの可愛い彼女のお話聞きたいでしょ?まだまだあるのよ、家族仲良しエピソード。商店街のレンタルビデオ屋さんで、ちょっと大人な洋画を借りていたとか、ブランド店でネックレスを選んでいたとか。」 「そういえば、不思議よね。お兄さんと彼女さん全然顔は似ていないし、お互い苗字で呼んでいたの。腹違いの兄妹かな?」 「しかも彼女さん、最近腕や脚にアザがあったの。篤人くん知らない?まさか、お兄さん……。なわけないよね、家族なんだし。」 「篤人くんなんでそんなに震えているの?あ!まだ春先とはいえ、寒いもんね。あの時と同じだね。」 「あぁ、彼女さんのことは心配しないで!これは篤人くんへのちょっとした意地悪だよ、きっと。あたしももう報告はしないよ!ていうか、報告はもうできないしね。」 「え、何でって?そんなのは秘密。いくら篤人くんのお願いでも教えてあげられないの。ごめんね。」 「とにかく報告はもう、できないの。それだけ。まあ、近々ニュースでも見ればいいかも!バイバイ!」
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