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エレオノーラは怒る気も失せて、肩をすくめてみせた。
そのままズッカのチーズケーキを切り分けて口に運ぶ。
「あなたの料理でなら、野菜もいただきますわ。ですが、ペペローネだけは絶対に食べません」
「そこまで仰っていただけるのならば、私はもう何も言いません」
まだニコラは笑っている。
(ですが、何故かしら。不快に感じないのは……)
笑うニコラを見つめて、エレオノーラは微笑んでいた。
*
「王女殿下、話があります」
ある日の食事後。
珍しく真面目に、ニコラが話を切り出してきた。
「何かしら?」
「いよいよ王女殿下の婚約発表も来週ですね。改めて、婚約おめでとうございます」
頭を下げるニコラ。
改めて、エレオノーラは気づく。
彼がただの料理人であり、エレオノーラとは違う世界の人間であるということに。
「私のお役目もここまでです。明日、クチナーレへ帰ります」
「……そう」
エレオノーラは急に心が萎んでいくような気がした。
しかし、それを誰にも気づかせる訳にはいかない。
「短い間でしたが、尽力してくださってありがとうございます」
何故ならば、自分自身でもその理由が解らないのだから。
つとめて冷静に言葉を続ける。
「ところで、あなたはクチナーレ王国の王宮料理人なのでしょう? だとしたら、またあなたに会えると考えていてもよいかしら」
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