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それでも、エレオノーラは不味いと言うことはなかった。
「あなたの野菜料理は、どれもわたくし好みにしてくださっているのは承知しています。だからと言って、すべてを口にするなんて思わないでくださるかしら?」
「ズッカをチーズケーキに仕立ててみました」
「……あなたっていうひとは……」
ズッカも根菜の一種で、そのままでは固いが、熱することでほくほくとして甘みが出てくる。
それくらいの知識はあるが、エレオノーラは口にしたことがなかった。
「それにしても、どうして王女殿下はそこまでして野菜を拒むのですか?」
オレンジ色のチーズケーキの断面を見て、エレオノーラは溜め息を零した。
「子どもの頃は、嫌いではなかったのです」
「と、言いますと?」
「あれは五歳のときでした。出たのです、ペペローネのお化けが」
ニコラがきょとんとした表情になる。
「夜、寝ていたら、緑色に光り輝くペペローネが枕元に立っていてこう言いました。『お前のことを食べてやる』と。それから野菜のことが恐ろしくなってしまって、一切口にするのを止めました」
ぷっ、とニコラが吹き出した。
「う、嘘ではありません!」
「いえ、信じます。とてもかわいらしい御方だと思ったら、その……。すみません。不敬罪に当たりますかね。ふふ、はは……」
どうやらニコラの笑いのツボに入ってしまったらしい。
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