偏食王女と専属料理人

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「王女殿下がお望みであれば、きっと」 (きっと、ではなく。必ずと、約束してちょうだい)  エレオノーラは、そんな感情を飲み込んだ。 「また、あなたの料理が食べたいですわ。短い間でしたがご苦労さまでした、……ニコラ」 *  いよいよ、顔合わせの日となった。  着飾ったエレオノーラは馬車旅を経て、クチナーレ王国にやってきていた。 (やはり、ヴェルドーラとは国の規模が違いますわ……。わたくしがうまくやっていけるのかしら)  不安が頭をもたげてきたので、小さく首を振ってごまかす。 (わたくしがうまくやらなければ、あっという間にヴェルドーラはクチナーレの属国どころか一州になってしまいますわ。しっかりしなければ)  ――それに、この国にいる限り、ニコラの野菜料理を食べられる機会があるのだから――  さらに浮かんだ感情に、エレオノーラは驚いた。 (わたくしが、野菜を食べたいと思えるようになるなんて)  口元に笑みが浮かび、ようやく余裕が出てくる。  豪奢な謁見の間に辿り着いたエレオノーラは、最上級の挨拶を、余裕をもって行うことができた。  「お初にお目にかかります。エレオノーラ・ディ・ヴェルドーラと申します」  ところが。  顔を上げたエレオノーラは、絶句した。 (……また、騙されましたわ……!) 「フレデリコ=ニコラ・クチナーレだ。会えて嬉しく思う」
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