偏食王女と専属料理人

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 王子然たる、装いで。  目の前にいたのは、ニコラその人だったのだ。 「……クチナーレ王国では、王子殿下自ら、畑に出たり料理をしたりするのでしょうか」  思わず、エレオノーラは本音を零してしまう。 「そうだね。私が自ら畑に出たり料理をしたり、婚約者の顔を見に行くために隣国へ遠征したりするので、周りは冷や冷やしているようだ」 「……心中お察しいたしますわ」  ふっとニコラが笑みを浮かべる。  そして、エレオノーラに向かって手を差し伸べてきた。 「改めて、この結婚を政略結婚以上に愛のあるものとして成立させたいと思っている。受けてくれるかい」 (愛……)  エレオノーラはニコラを見上げた。 「わたくしを愛してくださると?」 「勿論。このひと月で、君の人となりは十分に知ることができた。生涯をかけて、君を愛することを誓おう」 「わたくしも」  エレオノーラがニコラの手を取る。 「あなたのことを愛します。ただし、ペペローネだけは絶対に口にしませんから」 「……国際問題に発展しても?」  そして。  ふたりは顔を見合わせて、楽しそうに笑うのだった。    
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