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エレオノーラはその美貌から、女神のようだと称されている。
豊かな金髪に、鮮やかなピンク色をした大きな瞳。透き通るような白い肌。
そして、決して負の感情を見せない穏やかな王女として国民から支持されている。
エレオノーラに見つめられたコックコートの青年は応じて頭を下げた。
「お初にお目にかかります、王女殿下。クチナーレ王国より参りました、名をニコラと申します。私なぞに殿下自らご挨拶いただけるとは、至極光栄にございます」
「いえ。わたくしは、このチーズケーキを作った方がどのような御仁なのか、直接お会いしてお話しをしてみたかっただけですの」
エレオノーラはチーズケーキを小さく切り、フォークに載せてニコラへと向けた。
「何故、このチーズケーキにカロータを入れたのか、理由をお聞かせ願えるかしら?」
周囲がざわめく。
カロータとは、細長くオレンジ色をしている根菜の一種なのだ。
……実は、エレオノーラは野菜嫌い。
農業立国であるヴェルドーラの王女でありながら一切の野菜を拒み、菓子だけで栄養を摂っている。
それをよく思わない国民もいるだろうという国王の考えから、王国の機密事項となっている。
しかしこの調理人に、それが知らされていない筈がないのだ。
「よく気づかれましたね。さすが、ヴェルドーラの王女殿下」
「理由によっては国際問題に発展いたしますわよ」
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