偏食王女と専属料理人

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 なんともいえない優しい香りが漂ってきて、応じるようにエレオノーラのお腹が鳴る。 (何かしら?)  興味本位でエレオノーラはキッチンを覗き込んだ。  すると、ニコラが作業をしているところだった。 (こんな時間まで料理をしているなんて、よほど好きなのでしょうね)  ぐぅ。  隠れて見ているつもりだったが、食欲をそそるようないい香りにお腹が鳴ってしまう。 「王女殿下? こんな時間に、どうなさいましたか?」 「……あなたのせいで、空腹なのです」  ニコラ以外誰もいないからこそ、エレオノーラは正直に不満をぶつけた。  くつくつとニコラが笑う。 「申し訳ございません。まさか、あれだけで気づかれると思っていなかったので……。すばらしい味覚をお持ちです。では、これに何が入っているかお分かりになりますか?」  ニコラが小さなカップで差し出してきたのは琥珀色のスープだった。  いい香りはこのスープから発せられていた。 (こんな美味しい香り、嗅いだことがありません。分かるかしら)  空腹も限界。  カップを受け取り、具が何も入っていないことを確認したエレオノーラは一気にスープを飲み干した。  頬を染めて、瞳を潤ませる。 「美味しいです……。複雑に味が絡み合っていて、豊かな香りがします。あなたは本当に料理がお上手なのですね」 「お褒めいただき光栄です」
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