21人が本棚に入れています
本棚に追加
なんともいえない優しい香りが漂ってきて、応じるようにエレオノーラのお腹が鳴る。
(何かしら?)
興味本位でエレオノーラはキッチンを覗き込んだ。
すると、ニコラが作業をしているところだった。
(こんな時間まで料理をしているなんて、よほど好きなのでしょうね)
ぐぅ。
隠れて見ているつもりだったが、食欲をそそるようないい香りにお腹が鳴ってしまう。
「王女殿下? こんな時間に、どうなさいましたか?」
「……あなたのせいで、空腹なのです」
ニコラ以外誰もいないからこそ、エレオノーラは正直に不満をぶつけた。
くつくつとニコラが笑う。
「申し訳ございません。まさか、あれだけで気づかれると思っていなかったので……。すばらしい味覚をお持ちです。では、これに何が入っているかお分かりになりますか?」
ニコラが小さなカップで差し出してきたのは琥珀色のスープだった。
いい香りはこのスープから発せられていた。
(こんな美味しい香り、嗅いだことがありません。分かるかしら)
空腹も限界。
カップを受け取り、具が何も入っていないことを確認したエレオノーラは一気にスープを飲み干した。
頬を染めて、瞳を潤ませる。
「美味しいです……。複雑に味が絡み合っていて、豊かな香りがします。あなたは本当に料理がお上手なのですね」
「お褒めいただき光栄です」
最初のコメントを投稿しよう!