偏食王女と専属料理人

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「何が入っているかまでは分かりませんが、こういうものも作れるのなら、どうしてカロータ入りのケーキなんて作ったのですか」 「これにもカロータは入っていますよ」 「な、何ですって?」  ニコラが大きな鍋の脇にある、煮込まれた後の具材をエレオノーラに見せた。 「チポッラ、カロータ、セダーノ。それから肉、骨。このブロードとよばれる琥珀色のスープの材料です」 「わたくしは、また、騙されたということかしら」 「いいえ、そんなことはありません。様々な食材が絡み合ってこのような味が生まれるので、殿下のご指摘は合っていたということです」  エレオノーラは、ニコラをまじまじと見つめた。 「もしよければ、もう一杯いかがですか? 体が温まって、ぐっすりと眠れますよ」 「……いただきますわ」  断ろうとしたエレオノーラだったが、お腹は正直だった。  そしてニコラの言葉通り、エレオノーラは朝までよく眠れたのだった。 *  とはいえ、エレオノーラの偏食は簡単にどうにかなるものではない。  翌日も食事を拒否していたところ、昼下がりにニコラは温室までエレオノーラを訪ねてきた。  「国王殿下から許可を賜りました」 「あら? ついに野菜料理を諦めるということかしら」 「いいえ。違います。王女殿下を、畑にお連れする許可でございます。という訳で今から向かいましょう」 「ど、どういうことですの」 *
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