偏食王女と専属料理人

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 エレオノーラはメイドによって動きやすい服に着替えさせられ、護衛と共に馬車に乗って国内随一の野菜畑へ連れてこられた。  ニコラは先に馬で到着しており、快哉を叫んでいた。 「やはり、この国の畑はすばらしいですね! まず、土がいい!」  護衛に支えられてエレオノーラは大地に足をつけた。  城内の絨毯とは違い、柔らかくもありしっかりとした感触が伝わってくる。 (完全にこの者の調子に巻き込まれていますわ。わたしとしたことが……)  それでも拒否しなかったのは、城の外へ出るということが滅多になかったからだ。  こんな機会でもなければ野菜畑へ訪れることもなかっただろう。 「ようこそお越しくださいました」  畑主がエレオノーラに近づいてきて、雇人共々頭を下げてきた。  この者たちは、王女が野菜嫌いだと知らない。  エレオノーラは王女然として挨拶に応じる。 「王女さまがお越しになるとはとても光栄です! どうぞ心ゆくまでご覧になってくださいませ」 「えぇ。お言葉に甘えさせていただきますわ」 「王女殿下、ご覧ください。これがカロータの畑です!」  遠くからニコラが近づいてきた。  コックコートではなく、作業着。  明るめの茶髪にエメラルドグリーンの瞳が陽に映えてきらきらと輝いている。  しっかりとした体躯なのは、農作業でもしているからだろうか。 「カロータの……?」
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