偏食王女と専属料理人

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 明るい緑色をした細い葉が土から無数に生えている。  抜いてもらってかまいませんよ、と畑主が後ろから言った。 「では、遠慮なく。よっ」  ニコラはしゃがむと、すぽっと手際よくカロータを抜いた。  土のついたカロータを掲げてうっとりとする。 「すごくふくよかなカロータですね。栄養が行き渡っている感じがします。食べてみてもいいですか?」  ぱっぱっと土を払って、ニコラはカロータにかぶりついた。 「えっ!?」  流石のエレオノーラも驚いて声を上げてしまい、らしからぬ動作を恥じて慌てて口を押さえた。 「うーん、瑞々しくて甘い!」 「……そ、そのまま食べられるものなんですの……?」 「新鮮ですから」  若干引いているエレオノーラに向かって、畑主は嬉しそうに好きなだけ収穫してくださいと言ってくる。 「王女殿下も、是非」 「……わ、わたくしにできるのでしょうか」 「大丈夫です。葉のつけ根をもって、空へ向かって優しく引っ張ってみてください。こんな感じに!」  すぽっ。  ニコラが二本目のカロータを収穫する。  エレオノーラはおそるおそる畑にしゃがみ込んだ。 (葉の、つけ根を、持って)  すぽっ! 「できました、わ、きゃっ!」  引き抜いた反動で後ろに倒れかかるエレオノーラ。 「エレオノーラさまっ!」  護衛たちが慌てるよりも早く、受け止めたのは隣にいたニコラだった。
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