偏食王女と専属料理人

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「よくできました」  ニコラが破顔する。  至近距離でエメラルドグリーンに見つめられ、エレオノーラは反射的に顔を逸らした。 「こっ、子ども扱いしないでくださいませ!」 (こんな至近距離で殿方に見つめられるなんて、はしたなくて恥ずかしいですわ!)  動悸もしてきて、エレオノーラは困惑する。  ぱっとニコラから体を離した。  顔に土をつけたニコラは、エレオノーラの動揺などまったく気にしていない様子で、次々とカロータを収穫していく。 (それはそれで、不満ですわね……。いえ、わたくしったら、何を)  エレオノーラは己の感情を忘れるためにも、必死にニコラに続くのだった。 * 「食べませんわよ」 「まぁまぁ、騙されたと思って。それに、畑の皆さんも見ていますよ」  小声で言い争い、折れたのはエレオノーラだった。  王女たるもの、国民に野菜が食べられないと知られてはいけないのである。 「流石に、王女殿下に土付きのままのカロータを召し上がっていただく訳にはいきません。ということで、しっかりと洗ってきたのがこちらのカロータです。あ、勿論、これは王女殿下がご自身で収穫されたカロータです」  畑に簡易的に設置されたかまど。  炎の燃え盛る上の網に、ニコラはカロータを置いた。 「焼いて、塩をまぶすだけです」 「……」  ぱちぱち……。じゅぅ……。  ほかほかと湯気を立てるカロータ。
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