偏食王女と専属料理人

9/13
前へ
/13ページ
次へ
 ニコラはそれを食べやすく切ろうと、ナイフを取り出した。 「待ってちょうだい。わたくしも、そのままかぶりつきますわ」 「えっ?」  今度はニコラが驚く番だった。勿論、周りの護衛たちは、それ以上に。 「承知しました。熱いので火傷しないように気をつけてください」 「えぇ」  護衛たちの制止を振り切って、エレオノーラはカロータを受け取る。  エレオノーラはカロータを手に、瞳を閉じる。 (大丈夫よ、エレオノーラ。わたくしは正当なるヴェルドーラの王女……!)  かぷっ。  小さなひと口だったが、護衛たちが沸いたのは気のせいではない。 (まったく土臭くなくて、ほっくりとしていて、ほのかに甘くて……美味しいですわ……) 「……悪くは、ないですわね」  瞳を潤ませながらエレオノーラは呟いた。  すると、勢いよくエレオノーラの両肩をニコラが掴んでくる。 「すばらしいです!」 「ちょ、ちょっと!?」 「それでこそ、ヴェルドーラの王女殿下!!」  エメラルドグリーンの瞳を、らんらんと輝かせて。 * 「ペペローネだけは絶対に口にしませんわよ」 「カロータを克服できたんですから、大丈夫です」 「克服なんてしていません」  エレオノーラはニコラに対して文句を言い続けていたものの、少しずつ野菜を口にするようになっていた。  すりつぶしてペースト状にしたものをポタージュに。  薄切りにしたものに、衣をつけてフリットに。  時にはチーズをたっぷりと載せてオーブンで焼いただけ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加