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ニコラはそれを食べやすく切ろうと、ナイフを取り出した。
「待ってちょうだい。わたくしも、そのままかぶりつきますわ」
「えっ?」
今度はニコラが驚く番だった。勿論、周りの護衛たちは、それ以上に。
「承知しました。熱いので火傷しないように気をつけてください」
「えぇ」
護衛たちの制止を振り切って、エレオノーラはカロータを受け取る。
エレオノーラはカロータを手に、瞳を閉じる。
(大丈夫よ、エレオノーラ。わたくしは正当なるヴェルドーラの王女……!)
かぷっ。
小さなひと口だったが、護衛たちが沸いたのは気のせいではない。
(まったく土臭くなくて、ほっくりとしていて、ほのかに甘くて……美味しいですわ……)
「……悪くは、ないですわね」
瞳を潤ませながらエレオノーラは呟いた。
すると、勢いよくエレオノーラの両肩をニコラが掴んでくる。
「すばらしいです!」
「ちょ、ちょっと!?」
「それでこそ、ヴェルドーラの王女殿下!!」
エメラルドグリーンの瞳を、らんらんと輝かせて。
*
「ペペローネだけは絶対に口にしませんわよ」
「カロータを克服できたんですから、大丈夫です」
「克服なんてしていません」
エレオノーラはニコラに対して文句を言い続けていたものの、少しずつ野菜を口にするようになっていた。
すりつぶしてペースト状にしたものをポタージュに。
薄切りにしたものに、衣をつけてフリットに。
時にはチーズをたっぷりと載せてオーブンで焼いただけ。
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