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(騙されましたわ!)
エレオノーラは激怒した。
だが、声を荒げて怒るなど王女らしからぬ行動だと解ってもいた。
テーブルの上には好物のチーズケーキ。丸皿にはエディブルフラワーも添えられて、まるで芸術作品のような彩りとなっている。
ナイフで切り分けて、フォークで口に運んだひと切れ。
ぴたりと食事をやめてしまった王女に、おずおずと問いかけてきたのはメイドのひとりだ。
「お口に合いませんでしたか……?」
エレオノーラは優雅な笑みを崩さぬままメイドに答える。
「今日はクチナーレ王国から招いた料理人の方が、我が国の料理人へ調理の手ほどきをしていたと言っていたかしら」
「はい」
「とてもすばらしい味だわ。お話をしてみたいので、その方を呼んでくださる?」
「かしこまりました!」
メイドのひとりが退室する。
エレオノーラはチーズケーキの断面を見つめた。
(見た目も香りも、ごく普通のチーズケーキだったから騙されましたわ。これは間違いなく……)
「呼んでまいりました」
すぐにメイドが戻ってきた。
隣には、背の高い、コックコートを着た青年。
エレオノーラは席に着いたまま、彼を見上げた。
「初めまして。エレオノーラ・ディ・ヴェルドーラと申します。本日ははるばる遠いところから我が国にお越しいただき感謝いたします」
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