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◇
バイト終わり、蒼井がおれの部屋に来た。狭いワンルームマンションに二人。ベッドに腰掛けるおれと、床に座る蒼井。机には酎ハイの缶が置かれ、お疲れー、と軽く乾杯をした。
豊元が休んだことが気になっている。無断でバイトを休むなんてしないような子なのに。蒼井にそう話すと、「なんだろうな」とそっけなく言われた。
「痛ててて」
彼は腕や腰をさすりながらそんな声を出す。
「なに? どっか痛いの?」
「いや、筋肉痛でさ、腰とか腕とか」
「なにやったんだよそれ」
「なにって、ヤッたんだよ昨日。初めてだったからうまく出来なくてさ」
意外だなと思いながら言葉を返す。
「へー、そうなんだ。彼女いたんだ」
「いや、彼女って感じでもないんだけど」
「へー」
突然の言葉におれは驚いた。あまりそういう話をするような奴じゃない。ましてや、彼女じゃない女の話? セフレとか?
「そのことを話したくて来たの? 急におれん家に来たいとかさ、珍しいから」
「あーいや、そうじゃないんだけど、まあ、そうだな、うん」
「なんだそれ」
蒼井はなぜか口元に、はあっと息を吹きかけている。
「寒い?」
「いや、大丈夫。豊元の気持ちがよくわかる」
「は?」
唐突に出た豊元の名前にドキッとしてしまう。『大丈夫? 体調悪い?』というラインは未だに既読が付かない。おれはもうダメなのかもしれない。フラれたとしても、嫌われるのはいやだ。勢いで告白をしたことを少し後悔していた。
「いや、あのさ」
蒼井がおれの方を見て話し始める。
「……俺さ、お前のことずっと好きだったんだ」
「は?」
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