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エピローグ
すっかり汗ばむ季節となり、もうじき蝉の鳴く声が聞こえてきそうだ。
私は、ベランダの窓を開け放して、椅子からぼんやりと流れていく雲を眺めていた。
思い切ってショートカットにしたため、扇風機が無くても、十分快適に過ごせている。
ドレッサーの前に嵩張るものは、もう何もない。
何気なく鏡に視線をやると、痣はまだ黒く残っている。
私は時々、首筋を撫でては思い出すのだった。
彼の、大きく冷たい手を。
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