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和歌子さん いきなり、こんな手紙を書いて、驚かせたね。 本当にすまない。 君には、いつも励まされてばかりだった。 実は、ずっと言えなかったことがある。 僕は、嗜虐症なんだ。 子どもの頃から、ずっと不思議だった。 気が付けば、大好きな愛犬や馬を傷つけてしまって。 末は弟まで。 父も祖父も曾祖父も、代々長子に見られる傾向だそうだけれど、その狂気を愛する人にぶつけることは、僕にはできない。 自分のために、誰かを犠牲にするなんて。 かと言って、一度継いだ家業を無責任に放り出すこともできない。 その狭間で悩みぬいた末、僕は圭二に全てを託すことを決めたんだ。 弟は、僕よりも父よりも、会社に情熱を燃やしているのだから。 和歌子さん、首の痣、本当に申し訳ない。 色白の君の首元が真っ赤に染まる度に、僕は自分を殺したくなった。 君にも圭二にも、本来背負わなくてよい荷を負わせてしまったね。 これからは、弟が圭一として生きていくことになる。 そのことだけは、伝えておきたかったんだ。 自分勝手なことばかりで、すまない。 勝手ついでに、最後に言わせてほしい。 ありがとう。 白波瀬圭一
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