5人が本棚に入れています
本棚に追加
8
和歌子さん
いきなり、こんな手紙を書いて、驚かせたね。
本当にすまない。
君には、いつも励まされてばかりだった。
実は、ずっと言えなかったことがある。
僕は、嗜虐症なんだ。
子どもの頃から、ずっと不思議だった。
気が付けば、大好きな愛犬や馬を傷つけてしまって。
末は弟まで。
父も祖父も曾祖父も、代々長子に見られる傾向だそうだけれど、その狂気を愛する人にぶつけることは、僕にはできない。
自分のために、誰かを犠牲にするなんて。
かと言って、一度継いだ家業を無責任に放り出すこともできない。
その狭間で悩みぬいた末、僕は圭二に全てを託すことを決めたんだ。
弟は、僕よりも父よりも、会社に情熱を燃やしているのだから。
和歌子さん、首の痣、本当に申し訳ない。
色白の君の首元が真っ赤に染まる度に、僕は自分を殺したくなった。
君にも圭二にも、本来背負わなくてよい荷を負わせてしまったね。
これからは、弟が圭一として生きていくことになる。
そのことだけは、伝えておきたかったんだ。
自分勝手なことばかりで、すまない。
勝手ついでに、最後に言わせてほしい。
ありがとう。
白波瀬圭一
最初のコメントを投稿しよう!