5.

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「最近、時々あるんだよ。ドラッグとか色々、小さなケースに入れて弁当の中に埋めて運んだりとか」 「へぇ。それって、モバイルミールの配達員が使われちゃってたり?」  警官は押し黙った。曇天で温度の上がらぬ2月昼間の空気の中、焦燥に似た匂いが溶け出すのを、柴本は鼻で捉えた。こりゃあ当たりか。 「もしかして、騙されて運ばされた連中、退とか言ってました?」 「さぁ?」  今度は匂いに変化がなかった。  捜査に当たっている訳ではないのだから、そこまで聞かされてはいないのだろう。 「んー、心配なら、ほじくって確かめてみます?」  その言葉に、人の良さそうな警官は大慌てで首を振った。 「いやいやダメでしょ!? ほら早く行きなよ。なんか評価とかあるんじゃない?」 「あはは、確かに。じゃ、失礼します」    ふたたび出発したものの、鼻の奥がチリチリ焼け付くような感覚は無視できなくなっていた。  溜め息をつき、また路肩に寄せて停車する。降りて保温バッグのジッパーを全開にした。  今はもう防衛官じゃない。けれども世のため人のために役立ちたい意思はまだ残っている。  だから法を犯したくないし、自分以外の誰かにも犯させたくはない。  もし何も無ければ、配達中に転んだってことにすればいい。言い聞かせながら、プラスチックのスプーンを料理の下に突き立てた。    カツン。スプーンの先端が硬い何かに当たる。容器の底にしては浅すぎる。  出て来たのは、スクリュー式の蓋で密閉された細長いプラスチック容器だった。  中身は分からないが、おそらく真っ当な品ではないだろう。 「ああ畜生! やっぱり当たりかよ!」  短く毒づいてから、警察官がいた場所に引き返した。
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