7.

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 日々の暮らしの中、わたしを変えてしまった78キロの毛玉もとい同居人に目を向ける。目が合った。  あいかわらず膝枕で横になったままだが、眼光の鋭さを取り戻している。 「また考え事か?」  そうだけど、まだ(まと)まってない。  正直に返すと、柴本はするりと機敏な動作で起き上がり、体のわりに大きくて分厚い手でわたしの肩をがしっと掴んだ。 「そっか。なら今のうちに言っておくけどよ。首突っ込むのは止めてくれ、な?」  肌に触れるか否かの距離まで、黒い鼻面を近付けて言う。吐く息の湿り気と温かさがくすぐったい。  こちらの考えはだいたい匂いでお見通し――もとい嗅ぎ通しか。   「もし、おれの頼みを聞けねぇってなら――」  まだ何も言わないうちに、わたしは柴本の太い腕でソファに押し倒された。赤茶の毛並みに覆い被さられて身動きがとれない。  人間(わたし)よりも少しだけ高い体温、それとハァハァと荒い呼吸音と心音。  言うこと聞けなきゃ、どうするつもり?  途切れたままの言葉に(あお)るように返す。疲れて動けなくするつもりなのは明白だ。     テーブルの上に置いた携帯端末が震動して着信を告げたのは、肉体労働に慣れた指先を肌に感じたのと同じタイミングだった。 「なんだよ」  わたしと柴本は、即座に現実に引き戻された。 (了)
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